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吉原 未央子  :ダンサー、パフォーマー、コレオグラファー

早稲田大学にて哲学、社会学を専攻。卒業後ダンスの道を選び、在学中から参加していたゴルジ工房(主宰:林貞之、小野一佳)をはじめ、ダンスカンパニーLENI−BASSO(主宰:北村明子)、武藤直美ダンスカンパニー等にてダンサーとして経験を積む。と同時に、東京、北米、ヨーロッパのダンスフェスティバル等でさまざまなコースを受講。その中でもコンテンポラリーダンス、リリーステクニックに興味を持ち、1999年渡欧する。

2000年、EUより奨学金を受けブリュッセルにあるダンス学校 P.A.R.T.S.(校長:アンヌテレサ・ドゥ・ケースマイケル)にて行われた6ヶ月間のレジデンシープロジェクト、THE X GROUPに参加。25人の若手ダンサー、振付家が世界各国から集められ、テクニーククラス、リサーチワークショップ、グループごとの作品創作の場が与えられ、才能ある仲間と講師陣に出会い多くの刺激を受ける。 "XL(エクストララージ)"(演出 マリアクラーラ・ヴィラロボス、ブラジル出身)、と "Surfaces Cleverly Implied Slightly Lucid Exterior"(演出 カタリーナ・メラ・アラネーダ、チリ出身)の2作品に出演。

2000年9月より1年間、オランダ、アーネム市の芸術高等専門学校EDDC(ヨーロピアンダンスディヴェロップメントセンター)にゲストステュ−デントとして在籍。リリーステクニック、インプロビゼーション、コンポジション、等を学ぶ。在学中に参加した作品の中で、 ON COMMON GROUND(演出:アルマン・ファン・デン・ハーマー)は日本の生活や文化をダンスを通して見つめなおすという興味深い経験であった。

2001-2002年、即興を主に構成された作品"Previous"(構成:サルバ・サンチス、スペイン出身)に参加。たとえば、それはジャズ音楽の即興におけるコード進行とそれをどう演奏するかという各ミュージシャンの挑戦のようなもの。動きの明確さと本能的な衝動のバランス、自己を深く見つめながら他者に対してオープンであること、抽象に徹した動きそれ自体を表現として成立させること、それらはいかにして可能なのか、という問いが上演のたびに繰り返される作品。

2003年は、いわゆる慣習的な劇場でなく、さまざまな空間を発表の場とした作品が続いた年。ライン川沿いの入り江 での撮影(“9 x landschap”)に始まり、工場の巨大な白い外壁や、高速道路の前の芝生の空き地、トラックの積荷降ろし口 (“P.O.P.-Ups”), 植物園 (“On Common Ground 2”), 古い教会 (“zucht” )。 それぞれの場は特異で、独自の雰囲気を作品に与えると同時に、ダンスの動きに自然と影響を及ぼしてくる。その空間の特性を活かすこと、その場の磁力とダンスを拮抗させていくことは、何より興味深い体験となった。

“The Rabbit Project” (2003) は究極的にフィジカルで刺激的、気の抜けない6週間だった。16人の強烈な個性を持ったダンサーと、偉大なる師、ダビッド・ザンブラーノ。彼らと踊り、ともに過ごした時間は純粋にすばらしかった。運動能力の未知なる限界と、無限の想像力、からだの内部への意識、他者の身体/空間との関係、そして、永遠とは?学んだことは計り知れず、吸収のプロセスはいまだつづく。 “When you pass through something, that thing is passing through you.”(君が何かを通り抜けるとき、その何かは君を通り抜けている。)

P.A.R.T.S. SUMMER STUDIO 2002で行ったリサーチプロジェクト”what we want to speak to the world”の完成版として、ビデオ映像を含んだ自作のデュエット“In between”(2003)を発表。(たまには自分の作品をやるのも気持ちがいいもんだ!)

2004年、“Vormsnoei(フォルムスヌーイ)” (演出:サネ・ファン・ライン, ZT ホランディア)により、オランダ演劇界という未知なる扉を開く。パフォーマンスに何ができる?どうしたら“劇場”という現象を起こすことができるのか? “Vormsnoei” は一見単純で、あっと驚くようなことが起こっているようにはあまり見えない。しかしながら、それゆえにこそ観客は次第にもっとも複雑なものを自らの想像力をもって見はじめる。パフォーマンスは実は、観客の中で起こる、というところにこの作品の過激さがある。

6人のライブミュージシャンと行われた即興ダンスパフォーマンス、“風神” (Japan Four Seasons) は、予想外の成功を収めた。作曲家佐藤尚美とファッションデザイナー金井大明とのコラボレーションによって、パフォーマンスは四つの季節を誕生-再生へのサイクルとして経験する実験的遊び場となった。音楽とダンスの呼応、期待を伴った観客の高い集中力によりパフォーマンスがより生き生きとしたものになった。