Still Live
still live 2006
photo : Kristof Van Gestel
8月よりローザスのプロデュースによるサルバ・サンチスの新作リハーサルがスタート。
舞台デザインにクリストフ・ファン・ヘステルを迎え、ドイツ現代音楽の作曲家、音と静寂の関係をヘルムート・ラッヘンマンの弦楽四重奏第二番Reigen seliger Geisterに着想を得た作品です。
07年1月デュッセルドルフにて初演予定。

“The starting point is Reigen Seliger Geister (Dance of the Blessed Spirits), German composer Helmut Lachenmann’s second string quartet, a work that is an in-depth study of the basic relationship between sound and silence.
Still Live deals with the relationship between materials and shapes and between movement and immobility.”

構成演出 : サルバ・サンチス
振付・出演: サルバ・サンチス、マノン・サントカン、吉原未央子
セットデザイン : クリストフ・ファン・へステル
照明デザイン: サルバ・サンチス 照明デザイン協力:トム・ファン・アークン
音楽 : ヘルムート・ラッヘンマン(弦楽四重奏第4番“Reigen Seliger Geister”),ジム・オルーク ”Terminal Pharmacy”
照明音響操作 : クライフ・ミッチェル
制作 : ハンヌ・ファン・ワイエンベルフ
上演時間 : 70分

企画制作 : ローザス & ベルギー王立モネ劇場
共同制作 : Mercat de les Flors バルセロナ *, Tanzhaus NRW デュッセルドルフ *, ImpulsTanzウィーン
* IDEE (Initiatives for dance through European exchange)



知覚の領域  (文:シャルロット・ファンドフェイファー)

サルバ・サンチスはスティル・ライブにおいて、音と静寂の関係を見つめながら、彼独自の動きの探求を継続する。そこではダンサー兼コレオグラファーとして出演したローザスの最近作「デッシュ」、「ラブ・シュープリーム(至上の愛)」と同様、インプロビゼーションが、重要な役割を果たす。スティル・ライブはドイツの作曲家ヘルムート・ラッヘンマンの弦楽四重奏第2番「Reigen Seliger Geister (精霊たちの輪舞)」を出発点とし,サンチスは楽譜のみではなくラッヘンマン独自の作曲のとらえ方、知覚、空間の概念にも着想を得て作品に取り組む。

作曲/Composition
'If the act of composing is meant to go beyond the tautological use of pre-existing expressive forms and - as a creative act - to recall that human potential which grants man the dignity of a cognizant being, able to act on the basis of this cognition, then composition is by no means a 'putting together', but rather a 'taking apart'.'

’もしも作曲という行為が、既存の表現形式を類語反復することを超え、人間に、認識する存在、その認識を元に行動することができる存在、としての尊厳を付与するあの潜在的可能性を ー創造的行為としてー 呼び起こすことを目的とするのなら、作曲とは決して’編集’ではなく、むしろ’分解’である。’

スティルライブは28分全部分挿入された音楽パート(「Reigen Seliger Geister」)を中心に構成される。この介入によって音楽と動きの間に緊張が生まれ、音楽がおわった後、緊張は動きによって引き継がれていく。動きの探求は音楽のリズムや時間構成に、というよりもむしろいくつかの作曲原理に基づいて行われる。楽譜は演奏者に比較的多くの自由を与えられた複雑な演奏法の手引きであり、それは音響の脱構築である。

インプロビゼーションにおいては、いくつかのパラミーターが設定される。ひとつの動きの変数が分離されるたび、とらえがたい雰囲気の変化がもたらされ、知覚は鋭敏化する。しかし、即興で紡ぎだされるフレーズはほとんど寸断されることなく、三人のダンサーは比類のない身体の制御とともに空間を滑らかに動いていく。ダンサー間の接触はほんのわずかだが、彼らが同じ構成にしたがって動いているように見える。これは「スーパーインストゥルメント」という概念に基づく。というのは、ラッヘンマンは弦楽四重奏団を16弦の構造、楽器間の序列を分別不可能な一つの身体、とみなした。そしてサルバ・サンチスにとって、これこそまさしくコレオグラフィー発想の元となり、ここから作品全体がつくりだされる。

知覚/Perception
'Perception is more adventurous and elemental than listening: it plays with our received opinions and securities, it presupposes utmost sensitivity in our intuition and intellect and in all related activities of the mind.'

'知覚とは'聴力よりもより冒険的で基本的である。すなわち知覚は一般に受け入れられている意見や安心をもてあそび、直感と知性とそれらに関するあらゆる心の働きにおいて、最大限の感受性を前提とする。’

スティルライブは観客の知覚を刺激する。目隠しをするというよりむしろ極微の変化にさらすというやりかたによってほとんどほとんど知覚できないくらいに。たとえば、一連の音楽が始まったときに気づく、それに先行していた静寂、静止したダンサーの身体に常に存在する動的なエネルギー、動きのスピードの変化によって現れる新しいクオリティ、、、。スティルライブはこのようにして観客の感覚の領域を拡大し、感受性を鋭敏にしていく。

(引用部分: Helmut Lachenmann - Musik als existentielle Erfahrung: Schriften 1966-1995, ed. by Josef Hyusler, Wiesbaden, 1996.)
Text originally published in Muntmagazine November 2006



過去の公演実績:
2007年1月5,6日
2007年1月11,12,13日
2007年1月16,17日
2007年1月18,19,20日
2007年1月25日
2007年1月31日
2007年2月13,14日
2007年3月29,30日
2007年5月10日
2007年10月31日 & 11月1日
2007年11月13日
2007年11月28日
2008年2月5,6日
2008年2月13日


photo : Herman Sorgeloos